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コラム

コロナウィルスの流行で、季節を問わずマスクを付けることが当たり前の世の中になって、もうすっかりマスク生活にも慣れては来ているんだけれど…。

「顔がわからない…」

仕事柄、たくさん人にお会いするのだけれど、このコロナ禍にお会いした方は特に顔の情報が半分しかなくて、覚えるのも難しいし、見分けるのも難しいんですよ。年のせいだけじゃないと思うの。ごめんなさいねー。それでも、準備ができてるときはまだいいんだけど、街中で急に「清水先生、こんにちはー」なんて言われると、「こんにちは!」とは言うけれど、どなたかわかっていなかったりします。ほんとにごめんなさいねー。忘れてるとかじゃないの、その時わからないってだけだからねー。

というわけで、今回は「記憶」と「味覚」について。まずは「味覚」から。本来「味覚」というのは、食べられるものと食べられないものを判断する本能的な機能なの。「味覚」はだいたい10~12歳くらいでピークを迎えると言われていて、この場合のピークは、味のセンサーとなる「味蕾(みらい)」という器官(舌の表面にある小さなポツポツのこと)の数と、そのセンサーの働きが活発になるという2つの観点から分析されています。ということは、小学生がピークでそこからは味ってだんだんわからなくなるの?早くない?と思うよね。大丈夫です。そもそも、わたしたちが「味」だと思っているものは、「味覚」によるものだけではないんです。目隠しをして鼻をつまんで物を食べると、何を食べたかわからないとか、風邪をひいて鼻が詰まっていると味が全然しないとか言うけれど、あれは「味」が「味覚」だけで判断されているのではなく「視覚」や「嗅覚」(「食感」「温度」「咀嚼音」とかいうこともあるわね。)が大きく作用している、いわば「味覚」はいろいろな感覚からなる総合的な感覚だと言えるの。

それともう一つが「記憶」。先にも書いたように、「味覚」は味蕾が受容して脳が感じる総合感覚であるということと、味のセンサーである味蕾の機能のピークが小学生くらいであるということを鑑みると、わたしたち大人が感じている「味」は、過去の経験や学習、先入観によって補われているの。「味の記憶」が何かを食べるたびに蓄積されていく。だから、子どもよりも大人である私たちの方が「味」を感じる力はあると言えるでしょう。つまり”美味しいものを知っている”ということね。

「味」について、もっと科学的なお話はまた別の機会に詳しく書くとして、「味」を構成する要素が単に「味覚」だけではないということだとわかってもらえたかな。食事をするということは、身体は食物を食べていて、脳は情報を食べているという状態。その情報には、例えば、お醤油の焦げた香ばしいにおいや、ぐつぐつというお鍋の音、食卓を囲んだ楽しい時間を共有したことなど様々なものが含まれているの。食事をするということは身体にも脳にもとても大事なことだし、お料理をするということは、脳が食べる情報をさらに豊かにしてくれると思います。

冒頭のお話のように、人は「見たこと」や「聞いたこと」は意識しないと忘れてしまったり、曖昧だったりするんだけど、「匂い」や「味」の方は記憶に残りやすいという調査結果もあるの。せっかく”おいしいものを知っている”のだから、ぜひ家族や子どもたちにも伝えたいよね。私が教えるお料理を通して、「味覚」だけではない本当の「おいしい」を知って欲しいなと思っています。

さあ、今日は何を作りましょうか?

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